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2017年8月25日金曜日

【法務】真実でなくても1度された登記は職権で取り消してもらうことはできません。

相談者のSさんの例を紹介します。
(Sさんには、このブログで紹介することに同意を得ています)


Sさんは、ビジネスパートナーとある組織を設立していました。


この組織は、LLC(合同会社)、LLP(有限責任事業組合)などのように、役員や組合員の全員の同意がなければ変更の登記ができないものです。


経緯の説明は省きますが、気がつくと、Sさんが同意していない事項について、いつの間にか変更登記がされていました。

変更には全員の同意が必要なのに、同意していないのに変更されているのは変ですよね。

そこでSさんは法務局へ行き、「利害関係人として」変更登記の申請書を閲覧させてもらいました。

閲覧の結果、その変更内容を定めた「同意書」に、Sさんの氏名が記名され、三文判が押されたものが出てきました。

SさんのビジネスパートナーがSさんの名前の三文判を買ってきて、勝手に押印したようです。

Sさんはその場で法務局職員に「自分は同意していないし、この印も押していないのですが・・・」と相談しましたが、
法務局職員には、その三文判が本当にSさんが押してないものと判断できませんし、
Sさんも自分が押していないことを立証できません。

結論として、その同意書が真実のものでなくても、1度された登記は職権で取り消してもらうことはできないということになります。

もちろん、この偽の同意書は、このビジネスパートナーによる「有印私文書偽造罪」であり、これは罰金刑のない、懲役刑しかない重い罪です。
さらに、その偽の同意書で登記申請までしているので、「公正証書原本不実記載罪」という罪にまで及んでいます。

しかし立証できない以上は登記官が職権で抹消できないならば、Sさんがこの登記を取り消すには、組織として更正または削除の登記申請をするか、裁判をして有印私文書偽造について争うしか選択肢はないようです。

このビジネスパートナーさんは、事の重大さまで考えていなかったのでしょう。

それにしても、すべての登記に添付する書類への押印が、実印しか認められなくなれば
こんなことは起きないかもしれませんね。
(ちなみに、役員の就任と辞任については、住所と氏名の記載と実印での押印および印鑑証明書の添付が必要です。)


※おことわり
今回は、登記をテーマにブログを書きましたが、当事務所では登記に関する業務はすべて提携の司法書士へ委託しております。
今回のケースも司法書士の先生に相談しながら進めました。


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